1.貧困をなくそう
担当:近藤美月
【貧困とは】
皆さんが「貧困」と聞いて思い浮かべるのはどのようなものでしょか。下の写真たちのような風景を思い浮かべる人が多いと思います。
(写真:Pixabayより)
「貧困」には二種類存在しています。1つは「絶対的貧困」でわたしたちがイメージする食べ物がない、家がない、などといった最低限の生存条件を欠くような貧困を指します。(上の写真のようなイメージ)
一方で「相対的貧困」というのは簡単にいえば世帯の所得が、その国の全世帯の所得の中間値の半分に満たない状態のことを意味します。一見、上の画像のように私たちがイメージするいわゆる「貧困」とは当てはまらない見た目をしていても、実は「相対的貧困」の対象にある人もいるのです。
【「貧困をなくそう」がSDGsの目標1なわけ】
-
2015年時点で7億3,600万人が極度の貧困状態(1日1.9ドル未満)にある。
-
災害による死者の90%以上は低所得国と中所得国に集中している。
-
世界人口の55%は社会保障にアクセスできていない 。
(国連広報センターより)
という事実が国連広報センターによって公表されています。
この貧困から生み出される問題が多くあります。
災害の被害(目標11)や社会保障(目標3)も、貧困が原因で十分なインフラにアクセスできていないことが原因です。
他にも,飢餓(目標2)や教育(目標4),安全な水やトイレ(目標6),エネルギー(目標7)なども貧困に関係していますね。
ポジティブに考えてみると貧困を解決することで複数の問題を同時に解決することができるのです!!
だからこそSDGsの1番初めの目標に「貧困をなくそう」が掲げられているのだと考えます。
169のターゲットのうち、目標1に関するターゲットは以下の7つです。
目標1の英文は「End Poverty in all its form everywhere」つまり、『あらゆる形態、あらゆる場所での貧困を終わらせる』という意味なので様々な方面からのアプローチが必要だと考えます。
現状の問題や課題、またそれらの原因について
わたしは3つの貧困の問題について考えました。
まず一つ目は世界の貧困についてです。先程日本の貧困に次いて述べましたが、正直比べ物にならないほど劣悪な環境で労働していたり生活をしていたりする人々が世界には沢山います。
綺麗な水を飲めない、働かなければならないので学校には通えない、医療が届かない、お腹いっぱいに食べれない等さまざまな問題があります。(これらは他のSDGsの担当者さんにお任せしたいと思います。)
「貧困」問題を解決するには様々なアプローチがあり、すべてを網羅的に取り組まなければなりません。
二つ目は日本の貧困についてです。現在、日本の相対的貧困率(世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々、122万円未満の世帯の割合)が2016年度は15.7%、つまり6人に1人は「相対的貧困」なのです。
日本はG7の中で米国に次いで相対的貧困率が高くなっています。それは日本が資本主義を採用しているため、経済的格差が大きく開いてしまうことが原因にあります。貧困層の家庭に生まれた子供は統計的に平均正答率が低かったり、「大学に行かない」のではなく「大学に行けない」という選択をせざるを得なかったりと相対的に貧困に陥りやすくなる悪循環が起こっています。
三つ目としてSDGsの「貧困」には含まれませんが、「心の貧しさ」についてで す。
かの有名なマザーテレサが来日した際の提言をご紹介します。
「けさ、私は、この豊かな美しい国で孤独な人を見ました。この豊かな国の大きな心
の貧困を見ました。」
「カルカッタやその他の土地に比べれば、貧しさの度合いは違います。また、日本に
は貧しい人は少ないでしょう。」
「でも、一人でもいたら、その人はなぜ倒れ、なぜ救われず、その人に日本人は手を
さしのべないのでしょうか。その人が飲んだくれだから! でも、彼もわたしたちも兄
弟です。本人はきっと孤独でしょう。 みなから無視されての......。やけ酒かもしれま
せん。」
「私は、短い間しか日本に滞在しないので手を貸してあげるのは、せんえつだと思
い、何もしませんでしたが、もし、女の人が路上に倒れていたらその場で、語りかけた
り、助けていたと思います。豊かそうに見えるこの日本で、心の飢えはないでしょう
か。だれからも必要とされず、だれからも愛されていないという心の貧しさ。物質的な
貧しさに比べ、心の貧しさは深刻です。心の貧しさこそ、一切れのパンの飢えよりも、
もっともっと貧しいことだと思います。日本のみなさん、豊かさの中で貧しさを忘れな
いでください。」
「愛は家庭から始まります。まず家庭の中で不幸な人を救いなさい。両者が愛し合い、
母親が家庭の中心となりなさい。平和とうるおいの家庭が築けたら、隣人を愛しなさ
い。自分が、自分の家庭が、愛に満たされなければ隣人を愛せません」
彼女は日本人の心の貧しさを指摘しています。心の貧困という問題は日本人であるからこそ無 視することはできないのではないでしょうか。
現代ではSNSが普及し、自分と他人を比べるということが多くなったために劣等感をひどく抱 いたり自尊心を傷つけてしまったりする人が多くいます。 また、最近SNSの誹謗中傷による芸能人の自殺のニュースが飛び交っていますね。悲しいこと に、日本の若者(15歳から39歳)の死因の第1位は「自殺」です。自殺までに至らなくてもうつ 病、自傷行為の割合は増えていると感じます。「近年の国際共同研究(Kesslerら2007)によれ ば、日本の国民で一生の間にうつ病、不安症など何らかの精神疾患にかかる人の割合は18%と報 告されています。しかしSNSによってグローバル化が進んだり沢山の人とのコミュニケーション の幅が増えました。「どのようにSNSと向き合うか」が私たちの今後の課題だと思います。
世界の貧困について
総務省統計局「社会生活基本調査」の『「ボランティア活動」の男女、年齢階級別行動者率(平成28年)』ではボランティア活動の種類が多くある中「国際協力に関係した活動」は最も割合が低い事がわかる。日本のボランティア参加率は26.0%で、かなり多いとは言えないうえに、そのうちの国際協力に関するボランティア活動は著しく低いのは、日本人の「貧困」に対する知識と意識が低いからなのではないかと考えます。告されている。(引用:日本学校保健会)」というのが事実です。
また、世界からの視点から見ても、日本のNPO/NGO業界は欧米から遅れています。しかし、18もの日本のNGO団体が世界のNGO TOP500にランクインしているで、世界においてインパクトは小さいけれど、良質な団体が数多く存在する事がわかります。
日本の貧困について
初めにあった絶対的貧困と相対的貧困では、日本は相対的貧困率が経済大国の中でも特に高いとされています。(世界の貧困は絶対的貧困率を問題視している。)2016年に発表された世界の貧困率比較では、日本は世界で14番目の15.7%となっています。先進国の中では中国やアメリカに次いで3番目となっており、先進国の中でも貧困率が高いことが伺えます。
また、世帯構造別で言えば、ひとり親世帯の貧困率は2015年で50.8%となっており、その半数が貧困状態であるとされているのです。(引用:gooddo)
心の貧困について
「心の貧困」をデータ上で表すことはとても難しいです。
『文部科学省が26日に結果を公表した問題行動・不登校調査では、いじめのうち会員制交流サイト(SNS)など「パソコンや携帯電話での中傷、嫌がらせ」の認知件数が、前年度から1596件増の1万783件に上った。』(引用:産経ニュース)
いじめによる自殺が増えている中、SNSによるいじめもSNSの普及率が上がるにつれて増えています。統計では1万783件となっていますが、実際はもっと多いと思います。”いじめ”これも心の貧困が年々増加していることにつながっていると思います。
NPO・団体
〜世界の貧困について〜
(TOP 500 NGOs platformによるランキング順)※貧困から発生する難民や医療などのNGOも含めました。
-
MSF(国境なき医師団) [フランス] : 医療・人道援助
-
BRAC [バングラデシュ] : 開発援助
-
DANISH REFUGEE COUNCIL [デンマーク]:難民支援
-
GRAMEEN BANK(グラミン銀行)[バングラデシュ]:マイクロファイナンス
-
ACUMEN FUND [米国]: 貧困対策の社会起業家支援
-
OXFAM [イギリス]:貧困対策
-
PARTNERS IN HEALTH [米国]: 貧困地域の健康支援
-
ISLAMIC RELIEF INTERNATIONAL [イギリス]:人道支援・開発援助
-
SAVE THE CHILDREN [イギリス]:開発援助
-
WORLD VISION[米国]: 開発援助
〜日本の貧困について〜
企業
{①世界の貧困についてアプローチしている企業, ②日本の貧困, ③心の貧困}
→ボーダレス・ジャパンはアフリカの貧困をなくすための小規模農家のプラットフォーム「アルファチャマ」や、貧困農家を支えるオーガニックハーブの契約栽培「AMOMA」など、事業活動を通じて世界の社会問題を解決することに挑戦しています。
→アパレル会社で、処分される在庫を再び商品として流通させる事業に特化しています。Shoichiが取り組む『TASUKEAI 0 PROGECT』では、日本で売れ残った未使用の衣服をASEAN諸国で安価に販売しています。
→ビッグイシュー日本はホームレス問題の解決に取り組む企業です。ホームレス状態(定まった住居を持たない状態)の方に仕事を提供するためにつくられた雑誌「ビッグイシュー」を展開しています。
→ジモティーは,地域の人同士で問題を共有して補い,支え合える仕組みを提供しています。また、ひとり親支援も行っています。
→オハナは,『任意売却』を行うことで金融機関に住宅ローンの返済を停止してもらうとともに,市場価格に近い価格での売却を実現し、貧困の連鎖を防いでいます。
→アディッシュでは学校非公式サイトのパトロールをはじめ、学校生活上の課題となりうるインターネットでの個人情報流出やネットいじめへの対策、ソーシャルメディアの活用について学校関係者をトータルにサポートするコンサルティングサービス「スクールガーディアン」を展開しています。
③キズキ
→キズキは「何度でもやり直せる社会をつくる」ことを理念に掲げ、不登校・中退・ひきこもりを経験した方など、もう一度勉強したい人の個別指導塾「キズキ共育塾」を運営しています。
【説明】
国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパンでは「モノを支援するだけでは、貧困は解決しない」と強調しています。そのためワールド・ビジョン・ジャパンは段階的な支援のステップを組んでいます。まず貧困地域の人々と信頼関係を築き、その次に貧困の原因となっている食糧不足、安全な水の確保、医療や教育などの基本的サービスや成形手段の改善を目指した取り組みを行い、子供たちや地域の人々が活動し、継続していく事ができるように準備する、といった3ステップによってプログラムを行っています。そのプログラムが達成するのには早くて14年以上かかるそうです。
つまり、「貧困問題」は今すぐに解決することはできないのです。
それならばいま私たちにできることは何なのか。これをDEEMのみんなで考えてSNSなどで多くの人に発信して、たくさんの人が貧困問題についてじっくり考えてほしいです。
【説明】
厚生労働省は「日本の子供の7人に1人が貧困である。」と調査報告をしています。
貧困家庭において子供は一番影響を受けます。親の所得の差が子供の学力の差につながり、将来性もある程度決まってしまっているのが今の日本の状況です。何かをしたいと思っても金銭的原因で学校に行けず、夢をあきらめざるを得ない子供たちが多くいます。
(引用:The Nippon Foundation ・livedoorNEWS)
【説明】
ある日本屋さんに行ったときに一つの本に目が留まりました。韓国の著者が書いたエッセイが翻訳されたもので『私は私のままで生きることにした』というタイトルの本です。私はただ単にこの本の表紙がかわいらしくて購入したのですが、想像していた以上に内容がとても共感することばかりでした。人間あるあるだと思いますが、他人と自分を比べて(最近は”インスタセレブ”とか)自分がみじめに思えたり、誰とでも仲よくしようとしすぎて(=誰にも嫌われたくなくて)断れなかったりなど今の時代を生きる多くの人が共感できることがたくさんありました。実際、韓国では70万部、日本では20万部も売れているそうです。
このことから多くの人の心にはたくさんの悩みがあるのだなあと実感しました。「他人と自分を比べてしまう」という事は人間の本能的なモノだと思いますが、特に最近はSNSが普及し、”他人”の範囲が広がったことによって自分をみじめに思ったり(それによって病んでいる友達も結構います)、誹謗中傷(大半は嫉妬とか妬みからできるものだと思います)が起こったりすることが増えているのではないかなと思います。SNSがどうあるべきなのか、今一度考えたいです。
My Voice
①世界の貧困について
貧困問題を突発的な何かで解決することはできません。国や地域という大きな単位ですから、支援するには何十年という月日をかける必要があります。自分1人で直接的に貧困地域の援助をするにはさすがに無理があります。そのため、NGO団体へ寄付したりといった間接的な支援をするのが有効といえます。また、直接的な支援も自分一人ではなく、たくさんの人と協力して行うことが重要なのではないかと思います。
➁日本の貧困について
世界から見たら日本の貧困は比べ物にならないくらいずっといい環境なのかもしれないけど、日本の貧困率は自分たちが想像しているよりも遥かに高いです。
私やわたしの友達は私立の学校に入っているので貧困層ではないと思います。そんな自分が知りもしない「貧困」という議題についてあれこれ言うのは正直いいのかなとは思います。
いくら考えても今すぐに貧困が無くなる!という解決策を見つけることはできません(もしできるなら現時点で貧困なんてないはずだ)。
①、②の解決策
何も知らないより知ろうとすること、そういう意識ががまず大事だと思います。多くの人が貧困問題についての知識や意識を持つことが解決への第一歩だと思います。
そして第二歩として”行動”を起こすことも大切です。支援としてわかりやすいのは寄付。時間がなくてボランティアなどの活動はできないけれど支援はしたい、という人など誰でも参加することのできる支援方法です。NGOの支援団体や(日本なら)児童養護施設へ寄付することで貧困地域の人々や貧困家庭の子供たちを支援することができます。寄付をするにあたってその(寄付する)団体がどのような活動をしているのかなどを自分たち自身で詳しく調べることができるので貧困問題への理解を深める事にもつながります。
しかし、寄付をしたくてもできない人もいますよね(学生など)。金銭的な支援をするならば寄付よりも少ないお金でできる募金があります。もし自分たちで募金活動をする場合は各団体に問い合わせる必要があるのでちゃんと調べてから行う必要があります。また、着なくなった服やぬいぐるみなどのリサイクル活動や寄付を受け付けているお店もあるので、捨てる前にまだ使えそうなものであれば寄付するのも支援につながると思います。
(私はボランティアや支援プロジェクトをDEEMでやってみたいなあと思っています。)
➂心の貧困について
こちらも同じで一瞬でみんなの考え方が変わる解決策はありません。
例えばDEEMのインスタグラムでmental healthの情報をたくさん発信したりして、多くの人が改めてSNSについて深く考えなおせる機会を作れるといいと思います。それにはなんかの説明会のような堅苦しいSNSの使い方のようなものではなくて、”みんな違ってみんないい”とか”他人と比べなくても貴方は美しいよ”とか、くさいようなフレーズ一つだけでもいいと思います。(実際そういうことが書いてある韓国のエッセイを購入する人が多くなっています。)
少しでもDEEMを通してポジティブになれる人が増えたらいいな~と考えています!
”人間らしく生きる。”ローランドさんがYouTubeでおっしゃっていた名言の一つです。ゲームをしていたりSNSを見ていたりして1日が終わるなんてすごく人間らしくなくて、散歩をしたり人と話したりしている時間のほうがよっぽど人間らしいなとおっしゃっていた言葉にすごく共感しました。
今の時代SNSがとっても主流になっていて、ケータイやパソコンといった電子機器を見る時間がすごく多くなっていると思います。仕事や勉強にはもちろん必要なものだけど、あまりにも見すぎるとブルーライトで肌の老化の進みが早くなったり、目が悪くなったり、頭が痛くなったりと健康にも被害を及ぼすので、SNSデトックスとか、いままでのスクリーンタイムから1時間でも減らしてみよう!みたいなことも発信できたらいいなとおもいます。
(まあ発信する手段もSNSになってしまうんですけどね。。)
参考文献
日経新聞(2019)「G7で2番目に高い日本の相対的貧困率。そこで何が起きている?」『日経ビジネス』https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00067/111200016/
gooddoマガジン編集部(2020)「日本の貧困層の定義とは?所得差の拡大が深刻」『
gooddoマガジン|社会課題やSDGsに特化した情報メディア』https://gooddo.jp/magazine/poverty/asia_poverty/japan_poverty/4455/
産経ニュース(2017)「SNSいじめも件数増 前年度から1596件増の1万783件に 文科省「もっとある」」『産経新聞』
https://www.sankei.com/life/news/171026/lif1710260037-n1.html
Koshian(2008)「マザー・テレサが見た日本の巨大な貧困」『狐の王国』
https://koshian.hateblo.jp/entry/20080613/1213358191
シニアガイド編集部(2017)「ボランティアの参加者は26%。地域に密着した活動が中心」『シニアガイド』
https://seniorguide.jp/article/1072228.html
キム・スヒョン著・吉川南訳(2020)「私は私のままで生きることにした」ワニブックス
gooddoマガジン編集部(2020)「貧困家庭の子供たちのために私たちができる支援の方法とは?」『gooddoマガジン|社会課題やSDGsに特化したメディア』
https://gooddo.jp/magazine/poverty/children_proverty/83/
五十嵐順一(2015)「世界のNGO TOP500! 果たして日本は?」『DR!VE|NPO法人ETIC
』https://drive.media/posts/6084
World Vision()「どうやって貧困を解決するの」『国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン』https://www.worldvision.jp/childsponsor/how.html
IRORIO(2017)「甘い?時代のせい?NHKの「見えない貧困」特集に賛否」『livedoorNEWS』
日本赤十字公式ホームページhttp://www.jrc.or.jp/
PIECES公式ホームページhttps://www.pieces.tokyo/
日本リザルツ公式ホームページhttp://resultsjp.org/
ジョブ吉(2020)「社会問題を事業で解決することに挑戦している優良企業まとめ」『ニャンキャリア』https://nyancareer.com/2019/07/09/kigyomatome-social-issues/
Kobol(2020)「【SDGs】目標1『貧困をなくそう』の内容や企業の取り組み」『ほったらかし投資ブログ』https://spacekobol.com/sdgs/case/sdgs1-and-case#toc6