top of page
6. 安全な水とトイレを世界中に

担当:荒井ひなの

はじめに

蛇口をひねれば使いたいだけ出すことができる安全な水。ウイルスの感染などの心配なしに使うことができるクリーンなトイレ。こんなことを当たり前に感じられる人は、地球上には当たり前ではない場所もあることは、小学校やニュースで聞いたことがあると思います。

ここでは、問題を認識だけでなく、どうしたらこの現状を解決できるのか、私たちにできることはないのか、について書いていくことを通し、みなさんが水と衛生の問題解決に向けた第一歩を踏み出す手助けができたらな、と思います。

水

3つの課題

地球上の水.png

1)水不足

地球にあふれているように見える、水。この水が地球上から不足になるなんて考えられませんよね。

 

しかし、右の図からわかるように、地球の約14億k㎥の水のうち、約97.5%は海水で、飲み水や灌漑にそのまま使える淡水はわずか2.5%程度。淡水のうち大部分は南極や北極の氷や氷河。地下水や河川、湖沼などの淡水は地球全体の約0.8%です。その中でも大部分は地下水で、人が利用しやすい状態にあるのは地球の水全体のわずか約0.01%、約0.001億k㎥!

地球の表面を覆う水分は、現在の技術では私たちにとって利用不可能なのです。

加え、人口の急激な増加、都市集中型の生活、そして気候変動などは、地球上の制限された水のresourceにプレッシャーを課す要因です。

課題

OECD(経済協力開発機構)によると、2050年までに、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は世界人口の40%にあたる39億人となる、と予測されているのです。私たちの過剰で非効率的な水使用の影響で、近い未来、今のように好きなだけ水を使うことはできなくなってしまうのです。

2)女性や子供への負担

水道の設備が整っていない国や地域では、水汲みを行うことが必須です。その場合、遠くまで何時間もかけて重い水を家族のためにくみにいき運ぶのは女性や子供の仕事なのです。

 これらは、ジェンダー平等への一手である女性の「働く機会」を奪ったり、

貧困のスパイラルから抜け出すための大事な一歩となるはずの「教育への機会」を子供たちから奪ってしまうでのす。(詳しくはSDGs目標4 「質の高い教育をみんなに」のページへ)

 実際、ユニセフによると、サハラ砂漠以南の330万人の子供たちが、毎日5Lの泥水を求め、彼ら彼女らの、貴重な8時間を費やしているのです。一方、国土交通省によると、私たち日本人は平均で250〜300Lの水を生活用水のみで使っているとされており、私たちの水使用の凄まじさがよくわかると思います。少しでも無駄な水を使うのは止めようという気になったかと思います。

 また、難民キャンプなどの、野外のプライバシーが守られていない不衛生なトイレは、女性や子供が暴力を受ける危険な場所にもなりやすく、水やトイレの問題と社会的地位の格差は大きな関連があるように見えます。

3)衛生上の問題

水やトイレの衛生状態は、途上国の特に子供たちの命を奪う大きな問題でもあります。

2017年時点で、

・地球上の22億人が安全に管理された飲み水へを利用できず、

・42億人が安全に管理された衛生状態を確保することができず、

。6億7000万人の人が未だに屋外排泄を行っている

とされているのです。数が大きすぎてなんだかどうしたらいいのかわかりませんよね。

このデータはわかりやすいかもしれません。

「毎日5,000人もの子どもが安全な水が飲めず命を落とす」

生きるうえで必要不可欠な「水」は、衛生的でないと体を蝕む原因となる、と言うことです。

​当たり前のように使えている綺麗な水やトイレ、私たちはその存在のもっと感謝しないといけないと思います。

SDGs 目標6

SDGs目標6 安全な水とトイレを世界中に

これらの問題を受け(上記が全てではないですが)SDGs 目標6は作られました。

ターゲットは以下の通りです。

6.1 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。

 

6.2 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。

 

6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。

 

6.4 2030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。

 

6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。

 

6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う。

 

6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。

 

6.b 水と衛生の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。

達成度

スクリーンショット 2020-09-03 19.48.16.png
スクリーンショット 2020-09-03 19.52.53.png

​グラフ1からわかるように、安全な水へのアクセスは改善の方向へと向いています。

この努力を絶やすこと無く継続させて青の安全に管理された水の割合を上げていくことが大切です。

また、グラフ2は2017年の時点で、安全に管理された水を使える人口の確率を示したものです。

​水資源が豊かな北米、欧州、北部ユーラシア大陸と裏腹に、南米、アフリカ、そしてアジアではモンゴルが危機的な状況にあり、これからもサポートが必要になってくると思われます。

新型コロナウイルスと水と衛生

ワクチンや特効薬が未発見の現在、手洗いうがいがウイルス感染を防ぐ最も効果的な方法とされています。

そんな中で、安全に管理された水や衛生状態がないと、ウイルスは簡単に広がってしまうのです。

・約42億人の安全に管理されたトイレにアクセスが無く、

・約22億人が安全に管理された水へのアクセスがとだだれ、

・約30億人が自宅に基本的な手洗い施設(シンクなど)がなく、

・約5分の2の世界の医療施設が、石鹸と水、またはアルコールを使用した除菌用品を持っていない。

https://sdgs.un.org/goals/goal6)

安全な水とトイレへの需要が上がる中、私たちは水不足という忘れてはならない問題も同時に直しており、

​より効率的で持続可能な水との生き方をみつけ採用することが求められているのではないでしょうか。

新型コロナウイルス
手洗い

日本と水問題

世界では水や衛生状態についても問題はよくわかったかと思います。

日本の降水量は、世界年平均降水量の約2倍ということで、水の自然循環によって淡水を比較的容易に手に入れられるという環境に恵まれています。それに加え、山地が多いため、交渉に降った雨や雪などの水分を容易に低所にある流域に届けられるというメリットもあります。

それでは、日本にとってのような課題を抱えているのでしょうか。

まずは山地が多い地形により、貯水が難しいこと。急勾配の斜面が多いために起きてしまいます。

また、生活用水のほとんどを上水道でまかなうため、浄水能力を超えた汚水を発生させると水質汚濁の問題へと導かれてしまいます。

例えば、2016年4月16日に起きた熊本地震の影響で、最大約326,000世帯が断水を経験したことです。断水は水道管の破傷は漏水によっておきましたが、それらの要因は主に2つ。​

一つは、2回の大地震による衝撃。水道管は、地震の起きた断層(布田川断層など)を断切していたことにより大破するなど、地震の直接的影響によって水道管は損傷しました。

もう一つは、水道管の老朽化問題です。古くもろくなった水道管は断水を起こしやすくなるに加え、水質悪化にも大きく影響するようです。

​元々熊本は比較的クリーンな水を得やすい環境にあり、汚染された水を安全な状態にすることはとても大変なことだと言います。

日本の課題

バーチャルウォーター

​:食糧輸入の際に、その食糧の生産に伴って必要となった水を「食料の輸入の際に、その食料の生産にともなって必要となった水を「間接的に輸入」したと捉える考え方。

例えば、1kgのとうもろこしを生産から消費までを行うには約1,200リットルの水が必要

    1kgの牛肉には約15,000リットルの水が必要

     :牛の飼育では、とうもろこしなどの穀物を飼料として消費

      牛輸入時の仮想水=飼料を生産用の水+牛そのものが消費する水

 

=1kgのとうもろこしを輸入すると、同時に1200Lもの水を、1kgの牛肉を輸入すると15000Lもの水も輸入している!という考え方です。

食料自給率が38%と低い日本は、自国の水資源を「節約」しており、水状況が芳しくない国や水不足に陥っている国をさらに窮地に追いやる可能性もあるのです。

 

スクリーンショット 2020-09-03 21.33.00.png
バーチャルウォーター

日本の食料自給率は、1960年79%から2018年37%と年々下がっていて、他国と比べてもとても低いことがわかります。。この原因は、人口の増加、農家や農業従事者の減少、小麦や肉など海外の安価な食材の輸入などが増加など多岐にわたり、一つ解決したことで何が変わる、という問題ではなさそうです。しかし、日本は食料を輸入することによって、使うはずだった量の水を仮想水を輸入することで「節約」している国であり、輸入先の国あるいは地域の水をバーチャルウォーターとして間接的に輸入しています。これは、無自覚のうちに、水状況が芳しくない国や水不足に陥っている国をさらに窮地に追いやっている可能性があるということにもなりとても危険です。

私たちは日本人として、

・地産地消(made in Japan)を意識する、

・食品ロスを減らす、

・週に一度でもヴィーガンなど地球に優しい食生活を心がける

など、個人としてでも変えていくことはできると思います。

NPO・団体の活動

​ここでは、水・衛生問題の関してアプローチを行っている3つの団体を紹介したいと思います。

NPO/団体の活動

1)JCI Japan (日本青年会議所)

​1944年に「積極的な変革を創り出すのに必要な指導者としての力量、社会的責任、友情を培う機会を人々に提供することにより、地球社会の進歩発展に資すること」を使命に発足された国際青年会議所の日本支部。

 

 2016年より安全な水で笑顔でを届ける、「Smile by Water」事業を行っています。実は私も、2020年 JCI Japanの「グローバルユース国連大使事業」で大使と選出され、今年はオンラインで事前学習やWorld Web Summitを通し、国際協力の大切さやSDGsに関連した国際的社会問題について、また、Smile by Water」事業をsustainableにするアイデアを出し合い、学びを深めました。

 

具体的に「Smile by Water」事業では、

・2016年度バングラデシュに雨水貯留タンク設置

・2017年度カンボジア魚の養殖事業を導入、その収益から井戸建設を

・2018年度インドエコサントイレを使用して衛生問題や教育を持続可能的に

・2019年フィリピンの学校に飲料水や貯水タンクを導入

などと行った活動をされているそうです。資金源は提携している自動販売機の利益を使用するに加え、途上国にただ支援続けるのではなく、彼ら彼女らが自立して生活する手助けをすることを目標とされていることが特徴です。

2)Water Aid

1981年にイギリスで設立され、水・衛生分野の特化してきた国際NGO. 清潔な水、衛生的なトイレ、正しい衛生習慣の3つを届けることをミッションに活動しています。

2018年度の活動:

・清潔な水を 家庭38.5万人、学校 20.6万人、保健医療施設123.8万人に

・衛生的なトイレを 家庭43.3万人、学校18.2万人、保健医療施設108万人に

・衛生習慣を 家庭150.3万人、学校69.5万人、保健医療施設99.1万人に

3)UNICEF(国際連合児童基金)

すべての子どもの命と権利を守るため、最も支援の届きやすい子供たちを最優先に、約190の国と地域で活動。保健、栄養、水と衛生、教育、暴力搾取からの保護、HIV/エイズ、緊急支援、アドボカシーなどの支援活動を実施し、その活動資金はすべて個人や企業、団体、各国政府からの募金や人に拠出金で賄われています。

水と衛生に関する活動:

・清潔な水を届けられるよう井戸などの給水設備設置、

・学校教育や保健所を通じて、石鹸を使った正しい手洗いなどの衛生週間を広める

例えば・・・

2016年度、1,360万人の人々へ安全な水の提供

ユニセフに募金すると・・・

・3000円:汚れた水を安全な飲み物にする浄水剤7025錠(35125L分)

・5000円:芸理による脱水症から子どもの命を守るORS(経口補水塩748袋)

・15000円:村々にきれいな水を届ける井戸の手押しポンプ用器材1基分に

・30000円:石鹸、洗剤、貯水容器などが入った家庭用衛生キット40人分に

・50000円:井戸の修理や部品交換などを行なう給水施設の管理人を7人育成

​が可能なのです!

NPO・団体の活動
解決策
スクリーンショット 2020-09-07 10.27.50.png

企業の取組み

1)株式会社LIXIL

LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。

  • 2017年4月~「みんなにトイレをプロジェクト」                      :一体型シャワートイレが1台購入につき、同社開発の簡易式トイレ「SATO」1台を開発途上国に寄付

  • 2017年4月~9月に20万8805台、2018年4月~9月に20万3454台の「SATO」を開発途上国に

  • 簡易トイレ「SATO」は、開発プロジェクトの中心となったデザイナーが実際にバングラデシュに滞在し、現地の人のニーズを把握して開発された。設置が簡単で、わずかな水で洗浄ができ、悪臭や虫を防げることが大きな特徴。

  • 2017年度に、緊急性が高いとされるバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプに5000台の「SATO」が寄付、インドの農村部にあたる、ワグホーリ村のトイレが無い家庭などを対象に寄付。

  • トイレがないため学習機会が奪われる生理中の女子を救うため、学校にトイレの設立も予定中。

2)サントリーグループ

使命:『水と生きる』

Philosophy考え方

サントリーグループでは「サントリー環境ビジョン2050」にて、貴重な共有資源である水のサステナビリティについて、

・全世界の自社工場での水使用を半減、

・全世界の自社工場で取水する量以上の水を育むための水源や生態系を保全、

・主要な原料農作物における持続可能な水使用を実現、

・主要な事業展開国において『水理念』を広く社会と共有するという目標を掲げています。

サントリーの『水理念』

  1. 水循環を知る

    使用する水の循環について科学的アプローチに従って流域を調べ、理解を深めます。

  2. 大切に使う

    水の3R(Reduce/Reuse/Recycle)活動を通じて節水に努め、浄化した水は自然に還し、環境インパクトを軽減します。

  3. 水源を守る

    サステナブルな未来を実現していくため、ステークホルダーと協力しながら使用する水の水源保全に努めます。

  4. 地域社会と共に取組む

    社会が豊かになるように、水課題の解決への貢献を通じて地域コミュニティを支援します。

Initiative取り組み

1)科学的なアプローチによるサントリー「天然水の森」活動

現在では、全国15都府県21ヵ所、約12,000haまで拡大し、2019年には「国内工場で組み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養」という2020年目標を1年前倒しで達成しました。さまざまな分野の研究者と連携し、100年先を見据えた継続的な活動を行っています。

2)「天然水の森」活動のほかにも、野鳥を保護する「愛鳥活動」や次世代環境教育「水育」にも取り組んでいます。

グローバル水育

2004年に日本で始まった。

子どもたちが水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引き継ぐために何ができるかを考えるきっかけとなることを目的とした、独自の次世代教育プログラムです。

2015年にからベトナム;トイレや洗面所などの改修や設置を支援、こどもたちの衛生環境の向上にも貢献

2019年からはインドネシア、タイ;地下水の浸透を助ける小型堰の設置、小川に土が流出するとこを防ぐための植樹などの水源保全活動

企業の取り組み
スクリーンショット 2020-09-07 10.28.01.png

最後まで読んでくださり​、ありがとうございます。

​水と衛生は、私たちが生きていくために一番大切なものと言っても過言ではないくらい大切な要素です。

 

私がこれらに関して特に問題だと思うのは、主に2つに分けられます。一つは、水と衛生が思うようにアクセスできないために命が危険にさらされている人たちがいること、そして近い将来、私たちのアクセスも不自由になる可能性があることです。どちらをとっても、私たちは日本人として水や衛生の「危機」に関しての知識・意識が低いことが大きな問題だと考えます。

 

私たちの住む日本という国は、

・経済大国・先進国

・豊富な水資源

・バーチャルウォーターという形で他国の水を輸入することで水を節約

などの要因が組み合わさり、水の「crisis(危機)」の実感や当事者意識がわかないことが多々あります。他の社会問題、例えば、環境問題や人種差別問題なども同様に、日本の地理的・社会的・経済的ロケーションにより、世界の多くの国で経験されている問題が実際には日本では稀だったりします。日本人は「平和ボケ」している、と言われるのもこれに関連してくる話です。

このような、私たちの人生に直接的に関係のないように感じられる、「invisible」な問題に対して、どう当事者意識を持って解決に取り組んでいくか、またどう他者まで巻き込んでアクションをしていくかはこれからの社会問題を解決するKEYになってくるでしょう。

ボーダレスジャパンの方々は、社会を”Re:Design”するために、「知る→繋がる→巻き込む」の3つのステップが大事とおっしゃっていました。知るステップで書物などで社会問題を学び、繋がるステップで被害を受けている方々と直接交わり衝撃を受ける。そして巻き込むステップでは、一緒に解決する仲間としてチャレンジする。世界スケールでの社会問題へさらされる機会が少ない私たち日本人には、とてもピッタリで気にするべきステップだと思います。

このページを読んでくださったみなさんと、少しでもアクションを起こす勇気を分かち合えたら嬉しいです。

​ありがとうございました。ひなの

参考文献

My Voice
参考文献
bottom of page